告白 
                      尾崎喜八

  若葉の底にふかぶかと夜をふけてゆく山々がある。
  真昼を遠く白く歌い去る河がある。
  うす青いつばさを大きく上げて
  波のようにたたんで
  ふかい吐息をつきながら 風景に
  柔らかく目をつぶるのは誰だ。
  鳥か、
  それとも雲か。

  疲れているのでもなく、非情でもなく、
  内部には咲きさかる夢の花々を群がらせながら、
  過ぎてゆく時を過ぎさせて
  遠く柔らかに門をとじている花ぞの、

  私だ。


 


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