眼前の蜜蜂に 尾崎喜八
深く沈潜し、 おもたく担って帰るがいい。 大部分の花粉はこの春風に奪われるが、 一片の甘美な蝋はお前に溶け、お前をやしなう。 そしてその力の記憶は、 お前と共に一旦は亡びても、 お前の知らぬ遠い世嗣ぎの いつかの春の面輪のなかに 強く晴れやかによみがえるだろう。