音楽教育について考える 


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=はじめに=

かなり前の事になりますが、H.ピュイグ=ロジェ教授(残念なことにお亡くなりになりましたね)の音楽教育法が日本でも脚光をあび、ピアノ教師たちに感銘と影響を少なからず与えていました。でも、その内容というものは教授の公開レッスンにも見られたように何ひとつ奇抜なものはなく、これまでも考えられてきた内容をただ単に実践されておられるにすぎない、という印象をその時、私は抱いたのです。しかし、よく考えてみると老教授の提唱されている内容が実は日本国内では行われていないからこそ、大きな反響を呼んだことに気がつくのです。では、なぜ行われていないのでしょうか? その原因は、明治以来の文部省の音楽教育理念の低さ、音楽大学における教育の不適切さ或いは不十分さ、音楽教室の運営の商業化などにあると言えるでしょう。しかし、今それを責めても仕方のないことですから、それよりもむしろ「どうしたら本当の音楽というものを勉強していけば良いのか」「どうしたら音楽を教えられるのか」「どうしたら本当の意味での技術を教えることができるのか」について一緒に考えてみたいと思うのです。

 ここで、ひとつの重要な点を指摘しておきましょう。それは、「教育」をする場合には、それがどんな科目であれ、ある程度順序だてられ、理論的である必要がある、ということです。感情や感覚と経験や勘だけで教育に望むのは無理が生じるということです。もちろん、そのような理論を生徒たちに押し付ける必要はありませんが教える側には必要なことなのです。「自分が歩んできた道」をそのまま生徒に踏襲させる、という方法もあるでしょう。それも結構ですが、その方法を肯定させるべき論理を持っていて欲しいのです。何やら難しい話をしてしましました。ともかくも、皆さんが勉強を始めるきっかけになれば、と思いながら……。

 


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